100均で買ったお皿なのに、なぜかやけに気に入っていた。シンプルな白い皿で、特別でも何でもないのだが、なんとなく手に馴染んで、気づけば毎日のように使っていた。それが先日、うっかり落として縁が欠けてしまった。
普通ならそのまま捨てるところだ。100円のお皿だし、同じものをまた買えばいい。でも、なんだか惜しかった。捨てようとするたびに「もったいないな」と思って、しばらくキッチンの隅に置いたまま放置していた。
そこで思い出したのが「金継ぎ」だ。
金継ぎは、割れたり欠けたりした陶磁器を漆で接着し、継ぎ目に金粉をまぶして修復する日本の伝統技法だ。傷を隠すのではなく、金で縁取ることで「景色」として昇華させる——その発想が、ずっと好きだった。
欠けた部分を金色の線が走る。それが修復の証であり、その器の歴史になる。「もの」を大切にする文化の中で生まれた知恵だと思う。
とはいえ、本格的な金継ぎは本漆を使い、乾燥に何週間もかかる本格的な工芸だ。さすがに100均の皿にそこまでやるのもどうかと思い、今回は「簡易金継ぎ」に挑戦することにした。
簡易金継ぎは、本漆の代わりに合成樹脂や陶器用パテを使う方法だ。乾燥時間が短く(数時間〜1日程度)、道具も専用キットがあれば揃う。本格金継ぎほどの耐久性や風合いは出ないが、初心者が気軽に試せる入口として最適だ。
調べてみると、Amazonに初心者向けの金継ぎキットがいくつか販売されていた。食品衛生法に適合した素材を使っているものを選んだ。どうせ使うなら、食器として実際に使い続けたいからだ。
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Amazon 金継ぎラウンジ 簡単金継ぎキットライト 金継ぎ講師監修。食品衛生法適合の合成樹脂を使用。初心者でも簡単に始められるライトセット。 |
Amazon TSUGUKIT つぐキット金 金継ぎ工房が作った伝統的な金継ぎセット。動画解説付きで工程がわかりやすい。1〜3枚分。 |
Amazon KIJIMATSU 本金継ぎセット 本漆・純金粉・純銀粉を使用した本格派。初心者〜中級者向けの詳しいマニュアル付き。 |
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キットの内容は、陶器用のパテ、金粉(または金色の粉末)、筆、やすりなどがセットになっていた。説明書も丁寧で、工程ごとに写真がついているので迷わない。
まず、欠けた部分の汚れをきれいに拭き取る。パテを少量取り出し、欠けた形に合わせて盛り付けていく。この作業が思ったより繊細で、爪楊枝を使いながら少しずつ形を整えた。盛りすぎると乾いた後にやすりがけが大変になるので、なるべく自然な曲面を意識しながら埋めていった。
乾燥は室温で数時間。乾いたら表面をやすりで整えて、金を乗せる工程へ——というところで、今はちょうどそこまで来ている。
パテで欠けが埋まった状態を見て、すでに少し感動している。欠けていた部分がきれいにふさがって、元の形に戻った。まだ金色の線は入っていないのに、「修復した」という達成感がある。
金継ぎは、壊れたものを直すというより、壊れた事実を受け入れながら新しい形を作る作業だと感じた。捨てようと思っていたお皿が、この手を通して少し変わろうとしている。それが不思議と嬉しい。
これから金を貼る。うまくいくかどうかはわからないが、完成したらまた報告しようと思う。
今回やってみて感じたのは、「ハードルは思ったより低い」ということだ。本格的な漆を使う金継ぎは確かに難しいが、簡易キットを使えば道具の知識がなくてもとっつきやすい。説明書の通りに進めれば、初日でパテ埋めまでは完了できる。
大切にしていた器が欠けたとき、すぐに捨てなくていい。金継ぎという選択肢を持っておくだけで、ものとの向き合い方が少し変わる気がする。
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