私が老眼を実感し始めたのは、およそ1,2年前のある日のことでした。長い間、視力の良さを誇りに思っていた私ですが、近くも遠くもはっきりと見えていた日々は、少しずつその輪郭を失い始めていました。
特に、雨や曇りの日には、光量の減少が視界に霞を帯びさせ、瞳孔が開いてピントが合わなくなる現象を強く感じるようになりました。
この現象は、「深度の合焦(Depth of Focus)」と密接に関係しています。
瞳孔が開くことで目はより多くの光を受け入れられますが、同時にピントが合う範囲が狭まり、特定の距離でのみ物事が鮮明に見えるようになります。
この原理は、カメラのレンズや私たちの目の光学系においても同様です。絞りが広がると、通過する光の量は増えますが、深度の合焦が浅くなり、ピントが合う範囲が狭くなるのです。
加えて、光量が少ない状況では、目の中の受光細胞である錐体細胞と桿体細胞の働きにも変化が生じます。
特に、暗い環境で活躍する桿体細胞が主に活動し始めると、物の形や細かいディテールを識別する能力が低下します。これが、ピント合わせが一層難しく感じる理由の一つです。
私の場合、老眼の進行と共に老眼鏡を手に取ることになりました。半世紀近く、目の矯正を必要としなかった私にとって、眼鏡をかけることはまだ違和感を伴います。
老眼という新たな挑戦は、人生の豊かさを感じさせてくれる一つの機会かもしれません。光と影の中で、私たちは常に変化を受け入れ、自らを再発見することが求められます。老眼鏡が少しの間、私の新しい友だちとなることでしょう。そして、これからも変わらぬ好奇心を持って、見える世界の美しさを追求していきたいと思います。